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いいなんキラリ
◆いいなんキラリ

おとみーさん

むかしむかし、神戸川の近くにおじいさんとおばあさんが暮らしていました。
冷たい雨がしとしとと降る夜、川のほうから人のすすり泣く声が聞こえてきました。
「おかしな声がするものだ。」
おじいさんは行って確かめて見ることにしました。
静かに音のするほうへ近づいて行くと、椿の木が二、三本はえている根元に顔色の青ざめた女の子が、がたがた震えていました。

「こんな雨の降る晩にどうしたのじゃね。そんなところに居ては風邪をひいてしまう。あばら家じゃが私のうちへきてお休みなさい。」
おじいさんとおばあさんは焚き火をたいてやったり、暖かいおかゆを食べさせてやりました。
やっと元気をとりもどした娘におじいさんはいろいろとたずねましたが、
「いずれはお話しなくてはなりませんが今は言えません。どうかお許しください。」と言うばかりでした。

数日たった雨の夜、おじいさんは今まで聞いたこともない「どどう どどう」という大きな音に目を覚ましました。
「いったい何が起こったんじゃろう」

おじいさんは外へ出ると大きな音のする千歯淵のほうを見ました。するとそこには真っ暗な闇夜にひとすじの輝く光が雲を貫いて一直線に天に昇って行くのが見えました。おじいさんは、腰を抜かして空をぼうっとながめていました。光の余韻が消え、次第にもとの暗い闇にあたりが包まれようとしている時、どこからともなくおじいさんに話しかける声がしました。

「おじいさん、おじいさん、実は、私は千歯淵にすむ龍の娘でございます。あの晩、大きくなったので天にいる父母のもとへ帰ろうと、雲が降りてくるのを見はからって飛び乗ろうとしていたのです。しかし失敗して泣いているのをあなたに助けていただきました。あなたに親切にしていただいたお陰で、この夜、天に無事帰ることができました。ありがとうございました。」

「私が打つ太鼓が
どどん と一つ鳴れば雨
どどん どどんと二つ鳴れば風
どどん どどん どどんと鳴れば雷
四つの時は大水
五つの時は悪い病気
六つの時は大そうどう
七つの時は地震、山津波
というふうに災難をお知らせします。これを目安にして幸せにお暮らしください。地上で受けたお礼のしるしでございます。」

おじいさんはこの話を村の人みんなに伝えました。それ以来この村の人たちは太鼓の音で前もって災難があることを知ることができたので、安心して暮らせるようになりました。村の人たちは、このことを感謝し、椿の木の下に祠をつくって末永くお祀りしたということです。

「おとみーさん」という飯南町八神につたわる伝説をご紹介しました。やさしい心を持った人間と、人間に化身した龍との心が温まるようなお話ですね。

天に昇った龍の娘を祀った祠は、現在でも神戸川のほとりにあります。地元の人はこれを「おとみーさん」と呼び、災難よけの神様としてお祀りしています。

おとみーさんという呼び名は「乙女さん」が訛ったものとも、「音巳さん」が語源であるとも言われています。(「龍」という字の偏とつくりをそれぞれ別の漢字として見ると「音」と「巳」になるからだそうです)

おとみーさんの祠
龍神橋
椿の木に囲まれたおとみーさんの祠
おとみーさんの祠近くの神戸川に架かる龍神橋

 

 

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